先まわりしない子育て
私が子どものころの話です。
小学生のとき、
「川の絵を描こう」という宿題がありました。
父が車で川まで連れて行ってくれて、
私は画用紙を広げ、絵を描き始めました。
すると父が、
「こうやって描くんだよ」
と言って、私の画用紙に
川の絵を描き始めてしまったのです。
きっと父は、
上手に描く方法を教えてあげようと
思ったのだと思います。
でも、その瞬間。
私のやる気はゼロになりました。
私は、自分で描きたかった。
画用紙は1枚しか持っていなかったので、
その日はもう、自分の川の絵を
描くことができませんでした。
結局、父が描いた絵を
学校へ提出しました。
これは少し極端な例かもしれません。
でも私は子どものころから、
周りの大人に何でもやってもらいすぎた、
かまわれすぎたと感じています。
中学生になっても、高校生になっても、
大人になっても……笑
「もう、かまわないでくれー!」
と思い、そこから離れたくて
一人暮らしを始めたほどでした。
そんな経験があるからこそ、
私は今、1歳8か月の娘を育てながら、
「先まわりしすぎないようにしたい」
と考えています。
子どもにとって、世界は初めてのことばかり。
触ってみたい。
行ってみたい。
自分でやってみたい。
大人にとっては、
すでに知っていることかもしれません。
でも、子どもにとっては未知の世界。
その好奇心を、
できるだけ大切にしたいと思っています。
娘は今、自分で靴下を履きたがります。
もちろん、まだ一人では
なかなか上手に履けません。
それでも、私はすぐには手を出さず、
まずはしばらく見守ります。
助けてほしそうなときも、
全部やってしまうのではなく、
最初の少しだけお手伝い。
最後は娘自身ができるようにして、
「自分でできた!」
という経験を残したいのです。
階段を見つければ、
何度も上って、何度も下りて。
こちらにとってはエンドレスですが
娘にとっては、それも大切な経験です。
食事も、できるだけ自分で
スプーンやフォークを使って食べてもらいます。
なかなか進まなくても、
無理強いせずに見守る。
転んだり、ぶつかったりすることも、
大きな危険がない範囲なら、
そこから学ぶことがあると思っています。
もちろん、毎日の生活では
ずっと待ってあげられないこともあります。
出発する時間なのに、
なかなか靴を履けない。
急いで車に乗りたいのに、
まだ遊びたくて乗りたがらない。
そんなときは、
「早くしなさい!」
ではなく、
「お母さんは、何時までに行かなくちゃいけなくて、今急いでいるんだ」
「お母さんはこれからお料理をするから、今はこれができないんだ」
と、できるだけ
“私はこう思っている”を伝えるようにしています。
そして、まだ自分の気持ちを
言葉で説明できない娘には、
「まだ遊びたかったね」
「これをやりたかったね」
「嫌だったね」
と、その気持ちを代わりに
言葉にするようにしています。
私の気持ちも大切。
娘の気持ちも大切。
どちらかを我慢させるのではなく、
一人の人として、お互いの気持ちを
大切にできたらいいなと思っています。
これは、ECCジュニアのレッスンでも
大切にしていることです。
幼児さんや小学生の
リスニング問題をしていると、
間違えるのが嫌で、
正解を聞いてから丸をつけたがる
生徒さんもいます。
そんなとき、私は、
「まずは、自分が思ったものに丸をつけてみよう」
「間違っても大丈夫だよ」
と伝えます。
間違えたからこそ、
次は分かるようになるかもしれない。
自分で聞いて、自分で考えて、
自分で答えを選ぶ。
その経験が大切だと思うからです。
先まわりとは、
本人が自分でやりたいと思っていて、
サポートを必要としていないのに
大人が手を出してしまうこと。
必要なサポートとは、
本人が助けを求めたときに、
やり方を教えたり、
ほんの少し手を貸したりすること。
私は、そんなふうに考えています。
もちろん、子育てに
一つの正解はありません。
親も子どもも、
一人ひとり性格が違います。
私の考えが正しいということではなく、
私自身の経験を通して、
今はこんなふうに感じているということです。
子どもが失敗しても大丈夫。
そして、
親が失敗しても大丈夫。
私は「失敗」を、
「けいけん」と読みます。
失敗は、成功するための気づきだから。
子どもにも、私自身にも、
「失敗しても大丈夫だよ」
と伝えながら、
一緒に成長していきたいと思っています














