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あけましておめでとうございます。
コロナ禍での年末年始、いかがお過ごしでしたか。時節柄、人の往来と会食の増加のためか、感染者数が一気に増え、脅威を感じる日々です。皆さまもくれぐれもお気をつけて、安心・安全にお過ごしになられますよう、心より願います。
さて、新しい年の始まりですので、今回は「なぜ学ぶか」について考えてみたいと思います。お父さんやお母さんは、お子さんから「なんで勉強なんてしなくちゃいけないの?」とか「数学や物理を学んで、それが将来何の役に立つの?」などと問われたことはありませんか。それに対してどのようにお答えになっていますか。
学問の目的について、福澤諭吉は『学問のすすめ』の中で大きく二つに分けて述べています。第一の目的として「自己の知識や見聞の範囲を広くして、それによって物事の道理を正しく判断する力を養い、人間たる者の使命を自覚すること」を挙げています。独立自尊の精神を掲げる福澤にとって大切なのは、人間は個人として独立して生きていくために必要な力、すなわち物事の判断力を身に付けていくことが必要である、ということです。インターネットやSNSの普及により、大量の情報が飛び交う世の中において、何が正しいか、何が大切かを見極める力は今後ますます必要になってきます。そのためには多くのことを学び、正しい知識を得なければならないため勉強することが大事、と言えます。
学問の第二の目的は、「人はただ一身一家の衣食を得ることで満足すべきではない。人の天性にはもっと高等な使命があるから、社会の一員となり、その一員として公共のために尽くさねばならぬ。」と福澤は言っています。つまり、自分ひとりがよければいいのではなく、社会の一員として、社会に対する義務を果たさなければならない、ということです。これは社会に出る前の学生の皆さんにはまだ関係ないことだと思われるかもしれませんが、学校という小さな社会の中にいて、学校をよくするために自分が出来ることをする、他者に対して思いやりを持つ、みんなと力を合わせてなにかを成し遂げる、といった社会性や協調性を養うことは小学生であっても重要なことです。これらを学んでいくことも学問の側面である思います。
私自身は、子どもたちに「なんで勉強なんてしなくちゃいけないの?」と聞かれたら、「善く生きるためだよ」と答えています。福澤が言うように、物事の判断力を身に付けていけば、人間として自分のためにも、人のためにも善く生きられるはずです。そのためには、コミュニケーションの道具としての国語や英語、世の中の仕組みを知るための社会、自然や科学の知識を得るための理科、物事の道理や筋道を立てて考えることを学ぶ数学、これら全てが重要でないはずがありません。これら全ての科目が「人」として生きていくために学ぶ「ひとつの学問」であると思います。それと同時に、学問の本質とは「知る喜び」にあり、なにか新しいことを知ることは本当に楽しいことです。それを子どもたちに伝えてあげられるような授業をこれからもしていきたいと思います。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
*参考文献:福澤諭吉『現代語訳 学問のすすめ』(伊藤正雄訳)岩波書店、2013年