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↑帰ってきたウルトラマン!
6月号で紹介した「はらぺこあおむし」が、華麗に変身して帰ってきました。おかえり!
全国的に比べると夏休みが短い長野県ですが、今年は例年よりもほんの少しだけ長かったようです。
しかし、気がつけばあっという間に夏休みは終わり、すでに2学期が始まっております。楽しい時間はすぐに過ぎてしまいますね~。皆さま、充実した良いお休みが過ごせたでしょうか。
毎年夏休み中は特別課題として、CD・DVDを聞く(リスニング)、リピートする(スピーキング)、音読をする(リーディング)、ノートに単語を練習する(ライティング)を毎日行っていただく宿題を出しています。
暑くてかったるいし、面倒くさい、遊びたい…と、集中して課題に取り組めない要素が盛りだくさんの夏休みは、なかなか毎日決まった時間に英語の勉強をするというのは難しいことです。
しかし、英語だけでなく、毎日決まった時間に机に向かって勉強することをルーティン化してしまえば、身体が「やらなきゃ」モードになり、自然とできるようになるはず。
ぜひ、ルーティン化できるようにがんばっていきましょう!
さて、今月のお題は
「ローマ字と英語ってどうちがうの?」(←ローマ字なんて、やんなくたっていいじゃん!)
…という、小5男子からの質問(文句?!)です。
今は小学校3年生でローマ字を学習し、同時に少しずつ英語にも触れていくと思うのですが、「ローマ字はなんのためにあるの?」という、そもそもの存在意義がイマイチよくわかっていない子が多いようですね。
そのせいで、中学生になってもローマ字綴りの癖が抜けずに“make”が”meiku” に、”take” が “teiku” になってしまったりするわけです。
ところで「ローマ字」って、使われているアルファベットは英語と同じ文字ですね。
これらは「ローマン・アルファベット」と呼ばれ、今から2,800年ほど前にエトルリア文字がローマに伝わり、そこから派生したものです。大文字AからZ、小文字aからzまでのそれぞれ26文字は、英語だけでなく他にもイタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語 、オランダ語、スウェーデン語、デンマーク語、 ノルウェー語、ドイツ語など、非常に多くの言語で同じ文字が使用されています。
では、日本では最初から英語ではなく、なぜわざわざ「ローマ字」を学習するのでしょう。
小学校学習指導要領の国語科によると、「第3学年においては,日常使われている簡単な単語について,ローマ字で表記されたものを読み,ローマ字で書くこと」が目標に掲げられていますが、そもそも「ローマ字」とは「ローマン・アルファベット」のことですから、私たちが学んでいるのは「日本語をローマン・アルファベットで表したもの」というわけです。
では、なぜ日本語をアルファベットで表す必要があるのかというと、ローマ字表記が添えられた駅の看板や道路標識などをあちこちで目にしますが、それらを読めなければなりません。
地名の漢字が難しくて読めないときは、ローマ字があるとわかりやすいですよね。それに自分の名前や住んでいるところを他の国の人たちに伝えたいときには、ローマ字で書く必要性もでてきます。
さらには、パソコンのキーボードで日本語を入力するときにもローマ字で入力したりしますね。
こうした理由から、現在は小学校の3学年から、国語の時間の中で、ローマ字を学習しています。
しかし、ローマ字のつづり方は、日本語の音が子音と母音の組み合わせで成り立っている「訓令式」または「日本式」と呼ばれるつづり方で習うのが一般的なようです。
これは昭和29年に内閣告示されたもので、母音 a, i, u, e, oにカ行は k, サ行は s, タ行は t …のように子音を合わせて作られていますので、シンプルで覚えやすいですね。
ところが、この訓令式の表し方ですと、英語話者にとって違う音に読めてしまうものがあります。
例えば、「シ」は訓令式で “si” ですが、これだと「スィ」と読まれてしまいます。
そこで、h を加えて ”shi” のようにつづる必要性が出てきます。
これをジェームス・カーティス・ヘップバーン(ヘボン)さんが考案した「ヘボン式」ローマ字と呼び、日本語の発音を英語話者にも正しく読めるようにしたものです。「シ」の他にも、「チ」“ti” → “chi”、「ツ」”tu” → “tsu”、「フ」”hu” → “fu”、などがあり、パスポートなどの氏名表記には、このヘボン式が用いられています。
このように、日本人にわかりやすい文字の規則性で表した「訓令式」と、外国人向けの発音の明確さで表した「ヘボン式」があるものの、「ローマ字」は日本人の名前や地名など、日本語を海外の人たちに理解していただくために必要だということです。
これで「ローマ字」と「英語」の違いと、「ローマ字」学習の必要性はわかったかな?
…質問者を始め、3年生以上の小学生全クラスに伝えたところ、あっさりと納得してくれたようで、こちらとしては逆に「えっ?あんなにローマ字はいらねぇって言ってたのに、もういいの?」…と拍子抜けしました。
特に感想もなく、「わかった」でおしまい。
あらま。
<参考文献>
文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)第2章 第1節 国語
https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_01.pdf
小学校学習指導要領解説
文化庁 小学校学習指導要領(国語)等におけるローマ字の扱い
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo_kadai/iinkai_51/pdf/93718601_08.pdf
堀田隆一『英語史で解きほぐす英語の誤解-納得して英語を学ぶために』中央大学出版部、2016年