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久しぶりの投稿です。
コロナで振り回された1学期が終わり、2学期に入っても猛暑とコロナで落ち着かない日々ですね。皆さまは日々いかがお過ごしでしょうか。
私は引きこもりの日々です。でも今年も夏休みには本を読みましたので、ご紹介したいと思います。
1冊目はオウィディウスの『変身物語』(Metamorphoses)です。これは今から2000年以上も前に書かれたもので、元々存在していたギリシャ・ローマ神話の変身の物語を集めたものです。例えば、ナルシストの語源となった美少年ナルキッソスの話は誰もが知る有名なお話ですが、池に映った自分の姿に恋したナルキッソスが変身したのが水仙の花(narcissus)ですね。このような様々な変身の物語が250も登場します。他にも知っている話は数多く登場します。ECCのスーパーラーニングで使用するPage Turnersでも扱っている話もあります。機織りが上手なアラクネという女性が女神ミネルヴァと争い、ミネルヴァよりも美しい織物を織ったことから、蜘蛛に姿を変えられてしまうお話です。ギリシャ・ローマ神話ですので読んでいて楽しく、とても2000年以上も前に書かれたものとは思えません。原文はラテン語で、15巻・12000行の詩から成っていますが、詩という決まりごとのある文体で書かれている上、1つ1つのエピソードが作者によってうまく繋ぎ合わされ、大きな一つの物語となっています。しかも2000年以上も語り継がれるような作品となっているのは本当にすごいことです!子供向けのギリシャ神話の本はいろいろあると思いますので、読みやすい本を手に取って読んでみることをぜひお勧めします。
以下は大人向けに。
オウィディウス『変身物語』(上・下巻)、中村善也訳、岩波文庫、1984年
2冊目はドイツ文学から。フランツ・カフカの『変身』(Die Verwandlung)です。あ、こちらも変身がテーマですね(笑) そしてこちらは今から100年位前に書かれた本です。そういえば、皆さまは何かに変身できるなら、何に変身したいですか?私はもう一度小学生くらいに戻って、人生やり直せたらいいな~なんて思います。そんなふうに、自分が何かに変身するような夢を見たことありますか。
この本は、営業マンとして働いているグレーゴル・ザムザが、ある朝目覚めると自分が大きな「害虫」に変身してしまっているところから物語は始まります。甲羅のような固い背中に細い足がたくさんある虫。いったいどんな虫なのでしょう。父親は敵意をむき出しにして泣き出し、母親はギャーギャー大騒ぎ。妹だけが食事の世話をしてくれます。大好きだった牛乳はとても飲めるものではなくなり、代わりに腐りかけた野菜が好物になります。人間の言葉は当然話せないし、動きもだんだんと虫のようにカサカサ壁や天井を動くようになっていきます。食欲も次第になくなり、とうとうグレーゴルは虫のまま死んでしまいます。しかし、グレーゴルが虫になって働き手がなくなると、これまでグレーゴルに頼っていた家族は、皆しっかりとして幸せになるのでした。
うーん、どうなんでしょう。この展開。何度も繰り返し読んでいくうちに、感想もどんどん変わっていきました。この本は、この短篇を読むだけでなく、他のカフカ作品や作者自身の生涯にも触れないと理解できない部分がたくさんあります。そこはぜひ皆さまにも味わっていただきたいと思います。こちらは大人向け。
カフカ『変身、掟の前で 他2編』丘沢静也訳、光文社古典新訳文庫、2007年
皆さまは本をたくさん読まれていますか?私は今、この歳になって、若いころにもっともっと本を読んでおけばよかったと後悔しています。本は自分自身を「変身」させてくれるものだと思います。これからも変身していかれるように頑張っていきたいと感じた2020年の夏でした。