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ECCの幼児・小学生向けのテキストでは、数えられるもの(可算名詞)を覚えるときに “a banana”, “ a peach”のように単語の前に “a” をつけて練習するようになっています。ですから、子どもたちはなんでもかんでも “a” をつけて “a hungry” “ a ski” みたいにおかしなことになっちゃうことがたまにあります(笑) しかし、これは早いうちから「数えられるもの」と「数えられないもの」を認識してもらうためですので、ニンジンは “a carrot”、コーンは “corn” のように自然と覚えていって欲しいのです。
ところで、なぜバナナは “a banana” で、リンゴは “an apple” なんでしょうか。
私はこれまで子どもたちにわかりやすいように、
「 “a apple” だと言いにくいでしょ。だから自然な言い方ができるように “a, e, i, o, u”(母音って言うよー)の音で始まる単語の前では “a” じゃなくて “an” になるよー。」
と説明してきました。
し・か・し!!
これは英語史の観点から言うと、完全な間違いであります!
元々ひとつを表わすのは “a” ではなく “an” の方でした。これは “one” (1)の音が弱くなって “an” となったためです。ですから本来であれば “an banana” “an peach” と数えるべきところ、子音の連続(nとb,
nとp)を避けるために “n” が脱落し、子音の前では “a” となったと考えられています。
このように、母音の連続を避けるために “a” が “an” になったのではなく、子音の連続を避けるために “an” が “a” になったと考えるのが正しいのです。
だったら、なぜ私はこれまで違う説明をしてきたのでしょうか。
…はい、申し訳ございません。
正直なところ、私自身の知識不足もありました。しかし、正しく知ってからも、なるべく幼児さんや小学校低学年の子どもたちが理解しやすいように説明しておりました。
しかし、だんだん英語がわかってくる年代の子どもたちには、きちんと英語の成り立ちから説明しないといけないですね。
レッスンの中でも訂正して説明していきたいと思いますが、中学生・高校生・保護者の皆さまは以下のラジオ、書籍、ブログをぜひご覧ください。慶應義塾大学の堀田隆一教授がわかりやすく説明してくださっています。英語史を学び、英語という言語がどうやってできたのかを知るのは、本当におもしろいと思いますよ。今回の不定冠詞( “a” と “an”)だけでなく、さまざまな英語の疑問についても考えるよいきっかけになると思います。
またこの教室日誌の中でも取り上げていきたいと思います。
書籍『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』研究社、2016年