2026.10.7 #190 “far”
『英語語源ハンドブック』の見出し語に基づいて英単語の語源を学ぶシリーズ、第190回は “far” 「遠くに、はるかに」です。
古英語期から見られる英語本来語です。
古英語では feor(r)の綴りで、副詞「遠くへ」、形容詞「遠い」の意味でした。
印欧祖語の *per- (前方に、…を通して)に基づいています。/p/ → /f/ の音の変化は「グリムの法則」で説明できます。横の長さを表わす wide に対して、縦の距離を表したのが far です。
印欧祖語の *per- (前方に、…を通して)に基づく語はヤバいほどたくさんあります。英語本来語では for(…のために、…に向けて)、from(…から)、forth(前方へ)、forward(前方へ)、fore(前の)、before(…の前に)、first(最初に、第一の) などです。
さらにラテン語由来では、approach(近づく)、appropriate(適切な)、approve(認める)、approximate(およそ)、deprive(奪う)、improve(改善する)、paramount(最高位の)、primary(主要な、初期の)、prime(最も重要な)、prince(王子)、principal(主要な、校長)、principle(規範、原理)、private(私用の)、privilege(特権)、probable(ありそうな)、proper(適切な)、property(財産)、purchase(購入する)…などなど、まだ書ききれないくらいありますよ。
far に戻りますが、far の比較級・最上級は、距離的な「遠く」を表わす farther – farthest と、程度「さらに」や距離も表わす further – furthest と、2種類の活用があります。どちらも far から派生してできた活用形だと思いきや、別の語からの借り物(→「補充法」と呼ばれています)なのです!
もともとは古英語ではfierr, fyrr – fi(e)rrest、中英語では ferrer, farrer – ferrest, farrest のような形でしたが、別の語である forth あるいはfore の比較級であるfurther が入ってきたようです。farther は further の綴り違いであったものが、ひとつの活用形として確立してしまったようですね。
